目に見えないウィルスとの闘いで漠然とした不安を抱え、ネガティブな心持ちになりがちな毎日。。。
良い方向に向かうために、おうちに籠る時間が長くなりそうですね。
家での時間を見直す良い機会として、リラックス空間に欠かせない家具について考えるのも良いかもしれません。
今回は、個人的に大好きな民芸家具とウィンザーチェアについてのお話です。
松本民芸家具
先日、沼津の老舗家具店「花森家具」さんにて、開催中の企画展「松本民芸のウィンザーチェア―職人がつくる美しい英国の椅子―」にうかがってきました。
このような時期ですので、貸切状態で見学させていただきましたが、店内の感染症予防対策は万全にされていらっしゃいました。
会期は4/10(土)から4/19(日)まで。※終了しています。
一目で「行ってみたい!」と思わせる美しいデザインのDM!
綺麗なミントグリーンとシルエットで見せる多種多様なウィンザーチェアが並んだ様子に期待感を抱かせます!
このDMが家に届き、目に留まった瞬間、惹きこまれました。
デザインって本当に大切ですね~(しみじみ)
写真;左手前はラダーバックチェア。他はウィンザーチェア。
松本民芸家具は、言わずと知れた長野県松本市発祥の名作家具を作り続ける老舗ブランド。
誰もが一度はどこかで見たことがあろう、落ち着いた漆塗(ラッカー塗装も有り)の濃いブラウンのそう、「あの家具」です!
花森家具さんは松本民芸家具を中心とした、世代を超えて(繋げて)永く使える本物志向の家具を扱う家具店です。
皆さまは民芸家具にどんなイメージをお持ちでしょうか?
色が濃くて重たい雰囲気になってしまうのでは…?
昔ながらの家具?
洋館もしくは、古民家に合いそうだけど…
どれもそうだとは思いますが、意外と現代的な様々なインテリアスタイルとのミックスコーディネートがマッチするんです。
遊牧民族の織物「ギャッベ」や「キリム」との相性もよかったり、和洋折衷スタイルもバッチリです。
写真;出典;BEAMS流インテリア(2)イメージ
写真;出典;ラフジュ工房さん イメージ
静岡市登呂遺跡の隣にある、人間国宝の染織家、芹沢銈介美術館敷地内にある「芹沢銈介の家」(移築)は、
正に世界の民芸品のコレクターでもあった芹沢銈介ならではのインテリアが見られ、民芸ミックスインテリアの素敵な事例です。
写真;「芹沢銈介の家パンフレット」抜粋
元々、学生時代お世話になった下宿先の叔母が婚礼家具として松本民芸家具を揃いで購入していたこともあって、
目近で見て実際に使う機会があり、勝手に親しみを持ち、「永く使える良い家具」という印象がありました。
職人さんがひとつひとつ手作業で丁寧に作っている家具は、しっかりとした造り。
その分永く使え、時を経るごと味が出て、メンテナンスで愛着も湧く。
それは家族の歴史と共に育てる家具と言っても過言ではありません。
(ちなみに叔母の家はごく普通の一般洋風住宅ですが、周りのインテリアとも違和感なくマッチしていました。)
昭和49年に当時の通産省指定の「伝統的工芸品」に、家具の分野では全国に先駆けて「松本家具」として指定を受けています。
日本の和家具と洋家具との本格的な融合、単なる耐久消費財としてでなく、使う人それぞれが使い込むほどに味わい深く、愛着を持って使うことができる家具。
そして、時代を超えて新しく、どこか懐かしい感覚を抱かせてくれる家具です。
松本民芸のウィンザーチェア展
前置きが長くなりました…。
今回うかがった企画展「松本民芸のウィンザーチェア」は、松本民芸家具の中でも特にウィンザーチェアに
着目した展示ということで、店内2階フロアにたくさんの「ウィンザーチェア」が集められていました。
ところで、ウィンザー、ウィンザーと連呼してきましたが(笑)そもそも「ウィンザーチェア」とはどんなチェア?
名前は聞いたことはあっても、その定義は…??
デザインがいろいろあるけれど、ここにある椅子すべてウィンザーチェアなの?
私の心の中の「???」を感じ取って、親切な店員さんがとても丁寧に教えてくださいました。
写真;企画展初日に職人さんによる椅子製作の実演が予定されていましたが、残念ながら中止となり、動画を流してくれていました。
17世紀後半頃からイギリス(主にイングランドやウェールズ)の地方に住む庶民の家や、農家などで使われていたとされるウィンザーチェア。
原型は、16世紀から17世紀にかけて使われていたカントリーチェアと言えるそう。
いくつかのタイプのあるカントリーチェアの中でもウィンザーチェアへとつながっていく、
「挽き物(ひきもの)椅子」は、板座以外は施盤加工(ロクロ加工)された脚、貫、背棒、肘置きで構成され組み上げられる椅子。
部材にロクロ加工が施された、正に挽き物の椅子です。
構造はいたってシンプルで、丸く削られた部材をホゾ組みして作られます。
この作り方がウィンザーチェアの製法の源だと考えられるそうです。
写真;組まれる前のウィンザーチェアの部材と、組んだ後(塗装前)のウィンザーチェア。
ウィンザーチェアの構造面からの定義はシンプルにまとめると以下のようになります。
「座面と脚や背棒が直接、ホゾ組みで接合されている椅子」
▲写真の組まれる前の部材を見ると分かりやすいですね!
したがって、脚と背枠が一本の材で加工され、その材が座板の側面で接合しているタイプの椅子(ラダーバックチェアなど)は、
厳密にはウィンザーチェアの範疇には入らないことになります。
なるほど!
勉強になりました。
「…ふむふむ。ということは、今回同じフロアにあるこの椅子はウィンザーチェアだけど、厳密に言うなればあれはラダーバック(背が梯子の形のようになっている)
なので違うということですね」…などと(心の中で)確認して見学することができました。
写真;手前の椅子はラダーバックチェアで、厳密にはウィンザーチェアの範疇からは外れる。
写真;家具職人さんが実際に使っている道具の展示。椅子のカーブに沿って様々な大きさのカンナを使い分ける。
松本民芸家具の創始者の池田三四郎氏は、戦後間もなく、柳宗悦の提唱する「民藝運動」に共鳴し、
松本地方に300年続く木工技術を伝承するために、地元の工人を結集して家具製造を開始。
300年前、イギリスの片田舎で生まれた「庶民の椅子」ウィンザーチェアを徹底的に研究し、木取りから仕上げまで一貫製作する、
松本民芸家具のウィンザーチェアが誕生しました。 ―引用;松本民芸家具HP
写真;創業当時からの商品カタログを使用。今でも愛される同じデザインの椅子を作り続けている。
写真;花森家具沼津店 外観
取材協力;花森家具沼津店
〒410-0064 沼津市共栄町7-24
日本人に愛される英国の椅子
民藝運動の創始者である柳宗悦と陶芸家の濱田庄司が1929年に渡英した際に買い付けて以来、
バーナード・リーチや芹沢銈介、池田三四郎らに愛され、今日まで西洋家具の代表として認知されているウィンザーチェア。
松本民芸家具以外にも、現在でも多くの家具デザイナーが、座板に脚や背棒が直接差し込まれたそのプリミティブな構造を、椅子の原型としてデザインソースにしています。
写真;飛騨産業「YURURI」チェア
写真;飛騨産業「YURURI」セミアームチェア
写真;飛騨産業「YURURI」チェア(手前)、セミアームチェア(奥)
写真;飛騨産業「Northern Forest」チェア
塗装仕上げが異なると、雰囲気が変わりますね。
明るい塗装仕上げだと、よりナチュラルに。カントリー調にも。
写真の飛騨産業の椅子は当店インテリアショップHANARE ALTANAでも取り扱っています。
ちなみに飛騨産業では、松本民芸家具から派生した北海道民芸家具というブランドを継承しており、
主材が松本民芸家具は「ミズメザクラ」ですが、北海道民芸家具は「北海道産カバ材」を使用し、
同じ精神で「伝統的工芸品」である民芸家具を作っています。
当店では飛騨産業を通じて、北海道民芸家具の取扱いがございます。
ご興味のある方はぜひ、ご相談ください。