お手本にしたい気になる作家の一人目は、明治の文豪・幸田露伴を父に持つ、文筆家 幸田文。

遅咲きの40代で文壇デビューを果たし、代表作『流れる』や『台所のおと』など多くの珠玉の作品を遺しました。
自身を語るとき、「台所育ち」という言葉を用いたそうですが、6歳にして母を、8歳にして姉を亡くしたことから、
父 露伴に家事一切を教え込まれたことに由縁があります。

『台所のおと』は、妻が立つ台所の音がいつもとわずかに違うことに気づく、病床の夫の話が表題作で、他10編を収録した作品。
『幸田文 しつけ帖』は、父に家事から身だしなみまで厳しくしつけられた幸田文が、その暮らしの知恵を伝える随筆集。
16歳の時には家事全般を任せられた文だからこそ、綴ることのできるエピソードや真に迫った教えを感じます。
とかく面倒に思う家事や炊事も一つひとつ丁寧に行うことで、その先に物事の道理が見えることを、文は幼き頃から感じ取っていたのでしょう。
偉大な父を持つ人の宿命ですが、その文才から文筆家として期待される一方で“父の思い出屋”である自分に疑問を抱き、
47歳にして芸者の置屋の住み込み女中として働き始めます。
その経験をもとに長編小説『流れる』を綴り、日本芸術院賞を受賞しました。
父の名にとらわれず、自分の道を切り拓く凛とした芯の強い女性の生き方を見せています。
引用・参照;『KURASHI』創刊号 *ハナレアルタナにて販売中。
書籍『台所のおと』と『幸田文 しつけ帖』はアルタナカフェにございます。
レンタルもできますので、お気軽にスタッフまでお声かけください。
本社・企画広報
山田 祐子